睡眠薬

効き目の長さだけではない、睡眠薬の違い(2025年版)

 近年では幅広い年齢層の患者さんが不眠の悩みを抱えています。2020年にはエーザイ株式会社よりデエビゴ錠(一般名:レンボレキサント)が発売され、睡眠薬の選択肢がまた一つ増えることになりました。しかし従来から使い続けられているマイスリー錠(一般名:ゾルピデム)やレンドルミン錠(一般名:ブロチゾラム)を使用している患者さんも多く、薬剤選択の基準が分かりにくいことがあります。そこで今回は執筆時点での睡眠薬における各薬剤の特徴と位置付けをまとめてみました。

睡眠薬は大きく3つに分類される

 まず初めに現在の睡眠薬は大きく3つの作用機序に大別されている。

1)ベンゾジアゼピン系受容体作動薬(代表薬:マイスリー錠、レンドルミン錠など)*非ベンゾジアゼピン系含む
2)メラトニン受容体作動薬(代表薬:ロゼレム錠)
3)オレキシン受容体拮抗薬(代表薬:ベルソムラ錠、デエビゴ錠)

以前はバルビツール酸系睡眠薬(代表薬:フェノバール錠など)も用いられておりましたが、呼吸抑制や強い退薬兆候がみられることから現在の使用はかなり限定的となっています。

ベンゾジアゼピン系受容体作動薬の特徴(*非ベンゾジアゼピン系含む)

 最も有名な睡眠薬がベンゾジアゼピン系受容体作動薬です。バルビツール酸系睡眠薬の依存性や副作用の強さが懸念され、1970年代ごろから今に至るまで睡眠薬として使用され続けている薬剤です。ベンゾジアゼピン系受容体作動薬は脳内のベンゾジアゼピン系受容体に結合し、抑制系の神経伝達物質であるGABAの働きを高めて催眠効果や鎮静効果を促します。

ざっくりとした表現ですが、ベンゾジアゼピン系受容体作動薬は強制的に疲れた時に眠くなるような状態にさせるような薬です。

ベンゾジアゼピン系受容体作動薬の中でも催眠効果の高いものをベンゾジアゼピン系睡眠薬抗不安作用の高いものをベンゾジアゼピン系抗不安薬と称し、どちらも作用機序は同じですが期待される効果の違いによって分類されています。

これは同じベンゾジアゼピン系受容体作動薬でも作用するベンゾジアゼピン系受容体のサブタイプに違いがあることで作用の違いが生じると考えられています。(ベンゾジアピン系受容体の中でもω受容体は催眠・鎮静作用に関係し、ω2受容体は抗不安・筋弛緩作用に関係しているとされる)

 ベンゾジアゼピン系受容体作動薬は抑制系の作用をもつGABAの働きを増強することで睡眠導入効果と覚醒系の抑制効果の両面を併せ持ち、睡眠を誘導し維持させます。なんと言ってもベンゾジアゼピン系の睡眠薬は効果のキレが良いとされています。これが長年、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が使われ続けている理由と言っても過言ではありません。血中濃度の上昇とともに速やかに効果が発揮されるため初回の服用でも効果を得られやすく、また作用時間が短いものから長いものまで薬の選択肢が多く、患者さんの体質に合えば満足のいく睡眠効果を得られやすい薬剤です。

メリットデメリット
即効性がある副作用が多い
薬剤選択が豊富依存性と耐性がつきやすい

デメリットは副作用が懸念されることでしょう。代表的な副作用が①筋弛緩作用による転倒、②一過性健忘、③翌日への持ち越し効果です。睡眠薬全般に言えることですが、薬剤の特性よりも患者さんの体質や代謝能力によって睡眠効果と副作用の度合いにバラつきが生じやすいとされています。一般的には作用時間の少ないマイスリー錠(一般名:ゾルピデム)やレンドルミン錠(一般名:ブロチゾラム)を用いて、睡眠効果と副作用の兆候から治療計画を考えます。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の一覧と特徴

薬品名(一般名)半減期(hr)【型】主な代謝経路            特徴
マイスリー錠(ゾルピデム)2
【超短時間】
肝臓(複数の代謝酵素による)・薬物相互作用の影響が少なく用いやすい
・非ベンゾジアゼピン系の化学構造式を持つが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴的な副作用には注意が必要
ハルシオン(トリアゾラム)2〜4
【超短時間】
肝臓(CYP3A4)・併用禁忌あり:CYP3A4の代謝阻害によるもの
・入眠潜時と途中覚醒を顕著に減少させる。抗不安作用を併せ持つためベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中でも効き目が強いとされる
アモバン(ゾピクロン)
【超短時間】
肝臓・ω1に選択的に作用するため依存性や筋弛緩作用などの副作用が少ないとされる
・服用後(起床時)に苦味あり
ルネスタ(エスゾピクロン)
【超短時間】
肝臓・アモバン錠の光学異性体。アモバン嬢より半減期が長く、途中覚醒の症状にも有効とされる。
・向精神薬の分類ではない為、必要に応じて長期処方が可能
・服用後(起床時)に苦味あり

 作用時間が最も短い超短時間型に分類される薬の中でも非ベンゾジアゼピン系の薬剤(マイスリー錠、アモバン錠、ルネスタ錠)はω1受容体に選択的に作用するため筋弛緩作用などの副作用が少ないと考えられています。

ハルシオン錠は抗不安作用も併せ持つため睡眠導入効果や途中覚醒に対しても高い効果が期待できる反面で依存性や薬物耐性を得やすく、オーバードーズの懸念がある薬としても知られています。またハルシオン錠はCYP3A4による代謝が主となるため相互作用と併用禁忌の薬剤が多数あります。最近ではコロナ治療薬のゾコーバ錠も禁忌と強い相互作用を受けるため禁忌として追加されました。

ルネスタ錠はアモバン錠の有効成分であるS体を取り出した薬となります。同成分からなる薬ですがルネスタ錠は副作用や依存性が少ないことが認められたことから向精神薬の分類ではなく、アモバン錠よりも効き目が長く途中覚醒に対する効果も優れているとされます。代表的は副作用は「苦味」です。この苦味は成分特有のものと言われており、唾液中に苦味を感じる成分が含まれてしまうことで苦味を感じてしまいます。苦味の元が唾液中にあるため、ガムや飴で苦味を誤魔化そうとすると返って苦味を感じてしまう恐れがあるので注意が必要です。苦味を感じるときは食事や歯磨き、うがいをすることで多少は誤魔化すことができるようです。

薬品名(一般名)半減期(hr)【型】主な代謝経路            特徴
デパス(エチゾラム)6
【短時間】
肝臓・催眠作用の他にも抗不安作用や筋弛緩作用も併せ持つ
・依存性がつきやすい代表的な薬剤のひとつ
レンドルミン(ブロチゾラム)7
【短時間】
肝臓(CYP3A4)・入眠障害に対して高い効果をもつ
・長期の服用によって耐性がつきやすい
リスミー(リルマザホン)10
【短時間】
肝臓(CYP3A4)・ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中でも比較的マイルドな効き目とされ向精神薬に分類されていない。
・ベンゾジアゼピン系特有の副作用には注意が必要
ロラメット / エバミール(ロルメタゼパム)10
【短時間】
グルクロン酸抱合グルクロン酸抱合により直接代謝されるため、肝機能や腎機能の影響を受けにくい

 短時間型の薬剤は睡眠導入効果に優れ、かつ適度な睡眠時間を得られやすいとされています。デパス錠は入眠障害に用いられることもありますが抗不安作用も合わせ持つため、日中に不安症状などの退薬症状が見られる場合もあるので注意が必要です。

レンドルミン錠は最も服用されている睡眠薬のひとつですが長期服用により耐性ができてしまいやすい薬剤です。耐性ができた場合は作用時間が同程度のロラメット錠(エバミール錠)に変更して様子を見る場合が多く見られます。ロラメット錠(エバミール錠)はベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中で唯一、グルクロン酸抱合による代謝経路につき他のベンゾジアゼピン系の睡眠薬で効果が得られない場合にも期待できます。

薬品名(一般名)半減期(hr)【型】主な代謝経路             特徴
サイレース / ロヒプノール
(フルニトラゼパム)
24
【中時間】
肝臓・強力な催眠作用と抗不安作用を併せ持ち、入眠障害と中途覚醒の両方に効果が期待できる。
・作用時間が長いため翌日の持ち越し効果に注意が必要。通勤で運転をするような患者には不向き。
ユーロジン(エスシタロプラム)24
【中時間】
肝臓・他の睡眠薬を用いても早朝覚醒が見られる場合に用いられる
ベンザリン(ニトラゼパム)28
【中時間】
肝臓・他の睡眠薬を用いても早朝覚醒が見られる場合に用いられる
ドラール(クアゼパム)36
【長時間】
肝臓・睡眠時無呼吸症候群の患者には禁忌
・食後の服用により血漿中濃度が2−3倍になり呼吸抑制を引き起こすことがある
ソメリン(ハロキサゾラム)85
【長時間】
肝臓・比較的安全性が高いとされるが、作用時間が長いので持ち越し効果による日中の転倒などには注意が必要。

 作用時間が中時間以上の薬は途中覚醒や早朝覚醒に対する効果に優れています。睡眠導入効果もありますが、入眠障害の患者さんには超短時間型の睡眠薬を併用する場合も見受けられます。

サイレース錠は睡眠薬の中でも最も効き目に優れている薬のひとつです。効き目が長いため午前中の傾眠や朦朧状態の発現に注意が必要です。また効き目が優れている反面で患者の依存傾向も強く、第一選択薬としては向いていないと考えられます。あくまでも他の薬剤で睡眠効果が得られていない患者に用いることがベターとされます。

ドラール錠は禁忌事項に食事がある珍しい薬剤です。食事の影響により吸収が増加してしまい呼吸抑制の副作用が発現しやすくなってしまいます。活性代謝物には抗不安作用があるため効き目に優れている薬ですが、服用に注意が必要な薬剤です。

メラトニン受容体作動薬(ロゼレム錠)とは

 メラトニン受容体作動薬は、体内時計を調整するホルモンであるメラトニン受容体に作用することで活動から睡眠へ移行しやすくする薬です。メラトニンは体内で生成されるホルモンであり、夜間にかけて増加して睡眠を促す効果があるとされていますが、加齢とともに働きが弱くなることが知られており高齢者の不眠の原因のひとつとも言われています。

不眠傾向にある患者さんはいわゆる体内時計が乱れている状態が疑われます。メラトニン受容体が刺激されると血圧の低下や交感神経機能が低下して眠りにつく準備ができるとされ、このメラトニンの働きを補うことで自然な眠りを促すお薬がメラトニン受容体作動薬です。

つまり、メラトニン受容体作動薬はホルモンの働きを助けることで体内時計を調節して自然な眠りを促すとされています。

ロゼレム錠(ラメルテオン錠)の特徴

 2024年時点で発売されているメラトニン受容体作動薬はロゼレム錠(一般名:ラメルテオン)とそのジェネリック医薬品のみです。ロゼレム錠は2010年に発売された比較的新しいお薬で、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使いづらい高齢者に適したお薬ともいわれます。

メリットデメリット
自然な睡眠を誘導できる即効性がない
依存性や副作用の懸念が少ない服用後の入眠効果が期待できない
他の睡眠薬との併用により相乗効果が期待できる併用禁忌あり

ロゼレム錠の特徴は自然な眠りを誘導できることです。ベンゾジアゼピン系に特有な筋弛緩作用や健忘などの副作用はなく、長期間の服用でも問題が起こりにくいとされています。

デメリットは入眠効果が弱く、患者さんが薬の効き目を実感しにくいためコンプライアンスが低下しがちな点が挙げられます。特にベンゾジアゼピン系睡眠薬などの効果が実感しやすい薬剤からの切り替えには注意が必要です。ベンゾジアゼピン系睡眠薬を使っている患者さんの場合はそのまま併用しながら様子を見てベンゾジアゼピン系睡眠薬を減量していく方法が取られることが多いです。

ロゼレム錠と一緒に飲んではいけない薬

 ロゼレム錠は副作用が少なく安全性が高い薬ですが、代謝ではCYP1A2が大きく関わっており代謝酵素が重複してしまう薬剤との相互作用には注意が必要となります。

併用禁忌       相互作用       理由
フルボキサミンマレイン酸塩
(ルボックス錠 / デプロメール錠)
本剤の最高血中濃度、AUCが顕著に上昇するとの報告があり、併用により本剤の作用が強くあらわれるおそれがある。本剤の主な肝薬物代謝酵素であるCYP1A2を強く阻害する。また、CYP2C9、CYP2C19及びCYP3A4に対する阻害作用の影響も考えられる。
(表)ロゼレム錠の添付文書より抜粋

薬剤の他にもロゼレム錠は食事の影響を受けることも分かっています。

健康成人(18例)にラメルテオン8mgを空腹時又は食後に単回経口投与したとき、食後投与では空腹時投与に比べ未変化体のCmaxは16%低下した。また、M-IIのCmaxは26%低下、Tmaxは1時間の延長がみられた。

ロゼレム錠の添付文書より抜粋

ロゼレム錠は就寝前の服用につき、食事の影響を受けることはそもそも少ないとされます。しかし多忙な方やご高齢の方では睡眠状況の不調から昼夜逆転のような生活になってしまう場合は少なくありません。

そもそも良質な睡眠を得るためには睡眠から2時間前の飲食は適切ではありません。ロゼレム錠を服用される際は「夜に眠るための正しい生活習慣を心掛ける」ことが重要となります。

オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ錠、デエビゴ錠)ってどんな薬?

 初めてのオレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラ錠は2014年に発売されました。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬とは作用機序が異なり、睡眠の覚醒を促進するとされるオレキシン受容体の働きを阻害することで脳の過剰な覚醒状態を鎮めて睡眠を誘導する薬剤といわれています。

オレキシン受容体拮抗薬は筋弛緩や健忘などの副作用が気になる高齢の患者さんや、依存傾向が少ないことからベンゾジアゼピン系睡眠薬での依存性が気になる患者さんに対して新しい選択肢となります。

しかしオレキシン受容体拮抗薬にも副作用がないわけではありません。特徴的な副作用として「悪夢」「異常な夢」といったものが確認されています。これはオレキシン受容体を阻害した結果、レム睡眠が増加することが原因と考えられています。

オレキシン受容体拮抗薬は中途覚醒や早朝覚醒の症状に対して有効性が高い一方で、入眠障害に対してはベンゾジアゼピン系の薬剤に劣ることが知られています。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬からの切り替えの際には丁寧に違いを説明する必要があります。

オレキシン受容体拮抗薬のメリットとデメリット

メリットデメリット
自然な眠りに近い入眠障害に対して効果がやや弱い
ふらつきや一過性健忘の副作用がない「悪夢」「異常な夢」といった固有の副作用がある
処方日数制限がない併用禁忌あり(ベルソムラ錠)
依存性が少ない

ベルソムラ錠とデエビゴ錠の違い

 現在、発売されているオレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラ錠とデエビゴ錠の違いについて比較していきます。

ベルソムラ錠デエビゴ錠
2014年発売日2020年
  あり(CYP3Aの代謝によるもの)  併用禁忌なし 
不適(吸湿性あり)一包化  可能1(ただしメーカー推奨なし)  
不適(吸湿性あり)半錠メーカー推奨なし
不可(吸湿性あり)粉砕不適(安定性によるデータなし)

ベルソムラ錠は吸湿性が高い薬剤につきPTPのままの交付が原則となります。またCYP3Aが代謝に大きく関わっているため、クラリスロマイシンを含む製剤やイトリゾール、また新型コロナウイルス治療薬のゾコーバも併用禁忌となっています。

デエビゴ錠はベルソムラ錠とは異なり併用禁忌がありません。またデエビゴ錠はオレキシン受容体の中でもより覚醒からノンレム睡眠への移行の役割を担っているオレキシン2受容体への親和性が高く、ベルソムラ錠よりも睡眠維持効果が高いとされています。

適切な服用と受診を

 現在、処方されている睡眠薬の特徴とその違いをまとめました。睡眠薬全般の特徴として患者さんの体質に合っているかどうかが重要となります。理論上はこちらの薬剤の方が効き目が長いはず、とされていても患者さんの体質によっては全く効果を感じられないということがしばしば起こります。睡眠薬は漠然と服用すべき薬剤ではありません。患者さんが適切な服用をされているかどうか、安全かつ有効な治療を提供することが重要となります。

  1. Eisai医療関係者の皆さまへ."【デエビゴ】一包化に関する情報はありますか?”. Medical.eisai.jp. https://faq-medical.eisai.jp/faq/show/15108?category_id=997&site_domain=faq./2022/12.(参照2024/9/6) ↩︎
  • この記事を書いた人

KUSURIno

処方薬と市販薬の医療情報サイト「Kusurino」を運営。 ドラッグストアと保険調剤薬局の経験を持つ現役薬剤師が薬のことをもっと分かりやすく、実用的な知識として提供します。

-睡眠薬