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オグサワ処方とは?|耳鼻咽喉科で使う抗生物質の特徴と使い分け

耳鼻咽喉科でしばしば見かける**「オグサワ処方」**とは、
オーグメンチン®(アモキシシリン+クラブラン酸)とサワシリン®(アモキシシリン単剤)を併用する処方のことを指します。

一見すると「同じ成分の薬を2種類出している」ように見えますが、実は理由があります。

  • オーグメンチン®(アモキシシリン+クラブラン酸)はβラクタマーゼ産生菌対策としてアモキシシリンの効き目を守る
  • サワシリン®(アモキシシリン単剤)はアモキシシリンを増量して治療効果を高める

つまり、オーグメンチンで菌の耐性対策をしつつ、サワシリンで有効成分のアモキシシリンを上乗せするという工夫がされている処方が「オグサワ処方」です。

患者さんへの説明ポイントとしては、
「似たようなお薬が2つ出ていますが、片方は効き目を強める役割、もう片方は効き目を守る役割」と伝えると理解されやすいでしょう。

オグサワ処方におけるアモキシシリンの服用量

オグサワ処方では、アモキシシリン(サワシリン®)をどの程度上乗せするかが効果と副作用のバランスを決める重要なポイントになります。

  • オーグメンチン®には**アモキシシリン(AMPC)とクラブラン酸(CVA)**が含まれています。
  • しかし、AMPC量を増やそうとするとCVAも同時に増えてしまい、下痢や腹痛といった副作用が出やすくなるため、
    サワシリン®を追加してAMPCのみを増量するのがオグサワ処方の考え方です。

オグサワ処方の代表的な組み合わせ(1日3回)

パターンオーグメンチン配合錠
250RS/125RS
アモキシシリン(AMPC)1日あたりのAMPC量AMPC:CVA比
標準250RS 1錠/回250mg /回1,500mg4:1
強め250RS 1錠/回500mg /回2,250mg6:1
高齢者など調整時125RS 1錠/回250mg /回 1,125mg6:1
  • 服用回数は**1日3回(毎食後)**が一般的です。
  • 目安として、AMPC(アモキシシリン)量1500〜2250mg/日、程度を狙う設計が多く、中等症以上の副鼻腔炎・中耳炎で使用されます。

なぜオーグメンチン®だけではダメなのか?

オーグメンチン®は、アモキシシリン(AMPC)に加えてクラブラン酸(CVA)から成る医薬品です。
クラブラン酸は「菌がつくる酵素(βラクタマーゼ)」をブロックする働きがあり、耐性菌に効果を発揮する点でとても優れた薬です。

しかし一方で、クラブラン酸は消化器系への副作用が出やすいことが知られています。特に下痢や腹部不快感が代表的で、患者さんから「お腹がゆるくなった」と相談を受けることも少なくありません。

もしオーグメンチンだけで十分な量のアモキシシリンを確保しようとすると、同時にクラブラン酸の量も増えてしまい、副作用リスクが高まってしまいます。

そこで考えられたのが「オグサワ処方」です。

  • 菌に対抗するためのアモキシシリンは、サワシリン®しっかり補う
  • クラブラン酸はオーグメンチンで最低限必要な量だけに抑える

この組み合わせにより、効果は十分に確保しつつ、副作用を最小限にすることが可能になる、というわけです。

「オグサワ処方」はどんな病気で使われるのか?

オグサワ処方が使われるのは、主に耳鼻咽喉科の感染症です。代表的なのは以下の2つです。

  • 急性副鼻腔炎
    鼻づまり、黄色い鼻水、頭重感や頬の痛みなどを伴う病気です。原因菌としてはインフルエンザ菌やモラクセラ菌が多く、これらは酵素を作って薬を壊すため、オーグメンチンのような「クラブラン酸入りの抗生物質」が必要とされます。
  • 急性中耳炎
    小児に多い病気で、発熱や耳の痛み、夜泣きの原因になります。こちらも耐性菌の関与が多いため、アモキシシリン単剤だけでは効果が不十分なケースがあり、オグサワ処方が用いられます。

このほかにも、扁桃炎など耳鼻咽喉科領域の細菌感染が疑われる場合で処方されることがあります。

ポイントは、「風邪」や「ウイルス感染」には効かないという点です。抗生物質は細菌にしか作用しません。

薬剤師としては、患者さんから「風邪なのに抗生物質を飲むの?」と聞かれた場合には「熱や膿のような症状が強いときは、細菌感染を想定して処方される」と補足してあげると理解されやすいです。

「オグサワ処方」とクラリスロマイシンの使い分けは?

耳鼻咽喉科でよく処方される抗生物質には、**クラリスロマイシン(クラリス®)もあります。

クラリスロマイシンとオグサワ処方(オーグメンチン+サワシリン)**はどちらも副鼻腔炎や中耳炎で用いられますが、症状の重さや目的によって使い分けがされています。


クラリスロマイシンが選ばれる理由と特徴
  • マクロライド系抗菌薬で、抗菌作用に加えて抗炎症作用を持つ
  • 症の副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎などで炎症を抑える目的
  • 比較的症状が軽く、「抗生物質を強く効かせるよりも炎症を和らげたい」ときに使用
  • 長期投与では**耐性菌(肺炎球菌など)**が増えるリスクがあるため、現在は漫然と使われなくなってきている

(具体的な症状例)

  • 鼻水や鼻づまりが長引いているが、熱や強い痛みはない
  • 炎症を和らげたいとき

「オグサワ処方」が選ばれる理由と特徴
  • 中等症以上の細菌感染症で選ばれやすい
  • 特に、インフルエンザ菌やモラクセラ菌など酵素を作る耐性菌を想定する場合に効果的
  • 日本の感染症ガイドラインでも、**中耳炎・副鼻腔炎の第一選択はペニシリン系(アモキシシリン単剤またはクラブラン酸配合)**とされており、オグサワ処方はその臨床応用とされる

(具体的な症状例)

  • 発熱や膿性鼻汁、強い耳の痛みなど「典型的な細菌感染」の症状がある
  • 小児で鼓膜膨隆や強い炎症がみられる急性中耳炎など

まとめると、軽症・慢性ならクラリスロマイシン中等症以上の細菌感染なら「オグサワ処方」

大雑把ではありますがこの整理を頭に入れておくと、処方意図の理解や患者さんへの説明がスムーズになります。

耳鼻科でよく使う抗生物質の比較

薬剤主な分類・特徴よく使われる疾患強み注意点・副作用処方のイメージ
アモキシシリン(サワシリン®/オグサワ処方の中心)ペニシリン系抗生物質急性中耳炎、急性副鼻腔炎、扁桃炎第一選択薬とされる。有効性が高いく、小児でも使いやすい。発疹、下痢。
伝染性単核球症では発疹が出やすい。
基本の抗生物質。軽症〜中等症でまず検討。
クラリスロマイシン(クラリス®など)マクロライド系抗生物質軽症〜慢性副鼻腔炎、気道感染症抗炎症作用もあるため、症状が軽いときや慢性例に有効。耐性菌リスク。
長期投与は避ける。
CYP3A4阻害による相互作用注意。
軽症や炎症コントロールを狙うときに選択。
セフェム系(フロモックス®、メイアクト®など)セフェム系第2・3世代抗生物質中耳炎、副鼻腔炎、皮膚感染症など幅広くβラクタマーゼ産生菌にも比較的強い。
小児でも処方しやすい。
耐性菌増加の懸念(特にBLNARに無効な場合あり)。
下痢、発疹。
ペニシリンにアレルギーや無効例のセカンドライン。

まとめ:オグサワ処方のポイント

  • オグサワ処方=オーグメンチン+サワシリンの併用
  • 目的は アモキシシリンをしっかり増やし、クラブラン酸は必要最小限に → 下痢などの副作用を抑える工夫
  • 急性副鼻腔炎や中耳炎など、細菌性が疑われる中等症以上の耳鼻科感染症でよく使われる
  • 軽症例や慢性炎症にはクラリスロマイシン、アレルギーや無効例にはセフェム系と使い分けられる
  • 薬剤師は、副作用(下痢・発疹)や相互作用、再診目安を患者に分かりやすく伝えることが重要


一言でまとめると、オグサワ処方は「効果を高めつつ副作用を減らすための工夫された抗生物質の組み合わせ」であり、耳鼻咽喉科での中核的な治療法の一つと言えます。

参考文献

  1. 日本化学療法学会/日本感染症学会 合同委員会. 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2020年改訂版).
  2. 日本耳鼻咽喉科学会. 小児急性中耳炎診療ガイドライン(2018年改訂版).
  3. アステラス製薬. サワシリン®カプセル/錠 インタビューフォーム.
  4. グラクソ・スミスクライン. オーグメンチン®配合錠 インタビューフォーム.
  5. 厚生労働省. 抗微生物薬適正使用の手引き 第二版(2019年).
  6. Kawanishi H, et al. Bacterial pathogens of acute otitis media and acute bacterial sinusitis in Japan. J Infect Chemother. 2017;23(12):827-832.
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お薬のキュレーションサイト「薬剤師1年目の教科書」を運営。 保険調剤薬局で働く現役薬剤師が薬のことをもっと分かりやすく、実用的な知識として解説します。

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