医療用医薬品

抑肝散と抑肝散加陳皮半夏の違い

抑肝散という漢方薬があります。

認知症の攻撃性や不眠症、いらいらなどの神経の高ぶりを抑えるために
処方される漢方薬です。
それと似た漢方薬に抑肝散加陳皮半夏とう漢方薬があります。
こちらの漢方薬も同じような神経の高ぶりからくる症状に使用される
漢方薬です。

この2つにはどんな違いがあるのか、どのように使い分けているのか
今回はその点を確認していこうと思います。

抑肝散とは

抑肝散は漢方で言う「肝」のエネルギーを整える漢方薬です。

東洋医学でいう「肝」とは体内の気や感情の流れのことをいい、
体の中にあるエネルギーを巡らせ調整する役割があります。
抑肝散は多くなりすぎてあふれてしまった「肝」や、
めぐりが悪く滞ってしまった「肝」のエネルギーを循環させることを目的として
作られた漢方薬と言えます。

もともとは小児に使用される漢方薬で、夜泣きや疳の虫と言われる
小児の癇癪に使われていたそうです。

そこから転じて現在では、大人の精神疾患やイライラ、怒りっぽさなど
ストレスなどで気がたかぶり、普段から興奮してカッとなってしまう方、目がさえて寝つけない方に
処方されるようになりました。

抑肝散加陳皮半夏とは

一方、抑肝散加陳皮半夏は文字通り、
抑肝散に「陳皮」と「半夏」を加えた漢方薬となります。

この「陳皮」と「半夏」を主とする漢方薬に「二陳湯」と言う漢方薬があります
つまり、「抑肝散加陳皮半夏」は「抑肝散」と「二陳湯」をあわせた漢方薬と言えます。

基本的には抑肝散と使われ方は同じで、肝の高ぶりを抑える効果があり、
イライラや怒りっぽさ、不眠などの症状に処方されます。

「陳皮」と「半夏」が含まれることで
胃腸症状への改善やストレスやいらいらがお腹の症状として出る人へ
適していると言われています。

二陳湯
構成生薬:半夏・茯苓・陳皮・甘草・生姜
効能効果:悪心・嘔吐
抑肝散加陳皮半夏の合包される際は、二陳湯から生姜がぬかれたものが含まれる。
胃腸に停滞した水分を取り除くことで消化器症状を改善すると言われている。
東洋医学では去痰剤として使われる。

効能効果

次に添付文書上の効能効果を見ていきます

抑肝散

虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症状
神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症
(ツムラ抑肝散添付文書より)

抑肝散加陳皮半夏

虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症状
神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症
(ツムラ抑肝散加陳皮半夏添付文書より)

見ての通り、添付文書上では効能効果は同じ物となっているため
添付文書だけでは、漢方薬の使い分けや違いなどが判断できませんでした。

次は構成される生薬など細かい違いを見ていきたいと思います

構成生薬と使い分け

蒼朮 茯苓 川芎 釣藤鈎 当帰 柴胡 甘草 半夏 陳皮
抑肝散 4 4 3 3 3 2 1.5
抑肝散加陳皮半夏 4 4 3 3 3 2 1.5 5 3

上記の様に「抑肝散加陳皮半夏」は「抑肝散」に「陳皮」と「半夏」を加えた漢方薬となります。

抑肝散は「甘みと渋み」があり抑肝散加陳皮半夏は「渋み」がメインの味になるようです
一般的には「陳皮」と「半夏」という、消化器症状を改善する生薬が追加されたことで
消化器症状が弱っている人は抑肝散加陳皮半夏が適していると言われています。

攻撃性やイライラの改善率を見ると「抑肝散」のほうが若干ですが改善効果が高いというデータがあり、
一方、不眠の症状に関しては「抑肝散加陳皮半夏」のほうが改善効果が高いとのデータがあります。

そのため、使い分けるとするならば、
ストレスやいらいらが攻撃性や神経の高ぶりに現れてしまう人は「抑肝散」が適していると考えられます。
また、ストレスやいらいらが攻撃性や神経の高ぶりだけでなく、不眠などの生活リズムまで影響してくる
症状には「抑肝散加陳皮半夏」が適していると考えられます。

まとめ

今回は抑肝散と抑肝散加陳皮半夏の違いについてまとめました。

添付文書だけでは、効能効果や適する体質なども同じため使い分けに難儀する漢方薬ですが、
構成生薬や臨床データを参考にすることで微妙な違いを知ることができました。
攻撃性やイライラからくる諸症状には抑肝散を
気分の高ぶりに不眠などの症状が伴う場合は抑肝散加陳皮半夏が適しています。

お薬の特性を知ることで、医師の処方意図を類推し、患者様に適切にアドバイスやお薬の説明が
できるように、日々勉強していきましょう。

 

参考資料
各種添付文書
https://www.tsumura.co.jp/brand/products/kampo/054.html
https://www.kracie.co.jp/ph/k-therapy/prescription/yokukansankatinpihange.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bpb/42/12/42_b19-00499/_article/-char/ja/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32921394/

  • この記事を書いた人

KUSURIno

「KUSURIno」は処方薬と市販薬の医療情報サイトです。 ドラッグストアと保険調剤薬局の経験を持つ現役薬剤師が薬のことをもっと分かりやすく、実用的な知識として提供します。

-医療用医薬品