抗不安薬

心療内科門前薬局の薬剤師がデパス錠・リーゼ錠・ソラナックス錠の違いを比べてみた

はじめに|抗不安薬とは?ベンゾジアゼピン系の概要

抗不安薬とは、不安や緊張、ストレスによる心身の不調をやわらげるために使われる薬です。不安障害やパニック障害、うつ病、心身症、自律神経失調症などの治療に幅広く用いられます。

中でも代表的なのが「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」です。このグループの薬は、1950年代に開発されて以降、即効性と安定した効果から世界中で広く使用されてきました。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、脳内の神経伝達物質である「GABA(ガンマアミノ酪酸)」の働きを助けることで、神経の興奮を抑え、不安を和らげる作用を発揮します。そのため、服用後比較的早く効果が現れやすいのが特徴です。

代表的なベンゾジアゼピン系抗不安薬としては、以下のような薬があります。

  • デパス(一般名:エチゾラム)
  • リーゼ(一般名:クロチアゼパム)
  • ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)

これらの薬はすべて同じグループに属していますが、作用時間や効果の強さ、持続性、副作用の出方などに違いがあり、症状や生活スタイルに応じて使い分けられています。

一方で、ベンゾジアゼピン系薬剤には「依存性」や「耐性」の問題も指摘されており、長期間の使用や自己判断による中止には注意が必要です。服用や減薬については必ず医師と相談しながら行うことが大切です。

近年では、依存性の少ない「非ベンゾジアゼピン系抗不安薬」や「セロトニン系の抗不安薬」も登場しており、より個々の患者に合った治療が可能になってきています。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の作用機序とは?

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、不安や緊張、興奮状態を抑えるために使用される代表的な薬のひとつです。この薬がどのようにして効果を発揮するのか——その作用の仕組み(作用機序)を理解するには、「GABA(ガンマアミノ酪酸)」という神経伝達物質の働きが重要です。

GABAは、脳内で神経の興奮を抑える「抑制系」の神経伝達物質で、ストレスや不安を鎮める自然な働きを持っています。ベンゾジアゼピン系の薬は、このGABAが働く「GABA<sub>A</sub>受容体」に結合することで、GABAの効果をより強く引き出します。

具体的には、薬がGABA受容体の一部に結びつくことで、GABAの信号が伝わりやすくなり、神経細胞の活動が抑えられます。その結果、脳の過剰な興奮が抑制され、不安や緊張、パニック症状などが軽減されます。

このような作用は比較的即効性があり、服用後すぐにリラックス効果や不安の軽減が得られるのが特徴です。
ただし、GABAの働きを人工的に強める性質上、長期使用による依存や離脱症状のリスクも伴うため、使用にあたっては医師、薬剤師の指導のもとに慎重な管理が必要です。

デパス錠・リーゼ錠・ソラナックス錠の違いをざっくりと比較

特徴項目 デパス錠(エチゾラム) リーゼ錠(クロチアゼパム) ソラナックス錠(アルプラゾラム)
抗不安作用 強い 中等度 やや強い
筋弛緩作用 強い 中等度 弱め
作用時間 短時間型(約3〜6時間) 短時間型(約6時間) 中間型(約6〜12時間)
作用発現時間 非常に速い(30分以内) 速い(30分〜1時間) 速い(30分〜1時間)

出典:

① 日本うつ病学会『抗不安薬・ベンゾジアゼピン使用ガイドライン』

② 第一三共『デパス錠 添付文書・インタビューフォーム』/『今日の治療薬2024』(南江堂)

③ あすか製薬『リーゼ錠 添付文書・インタビューフォーム』/KEGG DRUG Database

④ ファイザー『ソラナックス錠 添付文書・インタビューフォーム』/治療薬マニュアル2024(医学書院)

各薬剤の特徴をざっくりと説明

  • デパス錠(エチゾラム錠)は即効性が高く効き目を実感しやすい。筋弛緩作用も優れているため頓用でよく使われるが依存性やふらつきのリスクが高い。
  • リーゼ錠(クロチアゼパム錠)は効き目がマイルドで作用時間もほどよく安定している。高齢者や初めて抗不安薬を使う人に処方されやすい
  • ソラナックス錠(アルプラゾラム錠)は抗不安作用に優れ、かつ作用発現がデパス錠(エチゾラム錠)と比べて穏やか。頓服としても処方される。

添付文書とガイドラインから詳しく比較してみた

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の使い方比較ガイドライン
項目 デパス錠(エチゾラム) リーゼ錠(クロチアゼパム) ソラナックス錠(アルプラゾラム)
主な適応症 神経症、不安、うつ状態、
頸肩腕症候群、腰痛症、筋緊張性頭痛
神経症、不安、うつ状態 神経症、不安障害、うつ病の補助療法、
パニック障害
用法・用量 通常成人1回0.5mg、1日3回(最大3mg) 通常成人1回5mg、1日3回(最大30mg) 通常成人1回0.4mg、1日2〜3回(最大1.2mg程度)
服用タイミング 毎食後・就寝前が一般的 毎食後・就寝前 毎食後・就寝前(パニック障害では定時服用)
使用期間の目安 原則として短期使用(2〜4週間) 原則として短期使用(4週間以内) 原則として短期使用(8週間以内)
※パニック障害ではより長期の使用あり
減薬・中止の方法 急な中止は避け、
徐々に減量(離脱症状に注意)
段階的な減量が推奨 長期使用後の中止は徐々に減薬
注意点 筋弛緩作用が強く、
高齢者や運転に注意
鎮静作用は穏やか
依存性は低めだが注意
抗不安作用が強いが
依存性のリスクやや高め

※出典:PMDA 添付文書(各薬剤)/厚生労働省 向精神薬ガイドライン/日本うつ病学会 不安障害治療ガイドライン/医学書院「今日の治療薬2025」

使用上の注意(共通)

  • 長期連用は避ける:全ての薬剤において、原則として短期使用(数週間以内)が推奨される。
  • 突然の中止に注意:離脱症状(不眠、不安、けいれんなど)を防ぐため、徐々に減量する必要がある。
  • 高齢者では副作用(ふらつき、転倒など)に注意
  • 妊娠中・授乳中は原則禁忌
  • 飲酒併用は避けるべき:中枢神経抑制作用が増強。

抗不安薬の併用は大丈夫?併用による処方意図の違い

 抗不安薬が併用されることは臨床上で多く見受けられます。作用時間や効き目の強さが異なる抗不安薬を併用することで1日の生活において必要な時間帯に効き目を調節することが可能となります。実際の例として電車に乗る時や学校や職場に行く時、試験や会議の前など1日の中でのイベントや特定の時間帯に効き目を期待したい場合に2種以上の抗不安薬を併用することがあります。具体的な処方例としては下記のようなものがあります。

Rp 1 ) ソラナックス錠0.4mg 2錠 朝夕食後 14日分
Rp 2 ) デパス錠0.5mg 1錠 必要時 10回分

上記の処方は作用時間の長いソラナックス錠を1日2回の服用として日中に効果を期待させ、不安やストレスを強く感じる場面でデパス錠を追加して症状をコントロールする使い方です。心身症による症状や主訴は患者さんごとで大きく異なります。血圧やコレステロールのように検査による数値化が難しい為、患者さんが期待する場面で効果を発揮し副作用を最小限に留めることが重要となります。

まとめ

 薬剤による作用時間や特徴の差はありますが総合的な不安状態に対する強さの概念はリーゼ錠<デパス錠<ソラナックス錠の順になると考えられます。

必ず注意しなければならない副作用は傾眠や筋弛緩作用による脱力感や倦怠感です。生活スタイルを考慮しないと副作用のせいで日常生活がままならなくなることが懸念されます。頓服として使うのか、症状を安定されるために1日2−3回で服用するのか、副作用が起きた時の影響の度合いなど、患者さんの生活を考慮した服用方法を提案することが必要です。

  • この記事を書いた人

KUSURIno

お薬のキュレーションサイト「薬剤師1年目の教科書」を運営。 保険調剤薬局で働く現役薬剤師が薬のことをもっと分かりやすく、実用的な知識として解説します。

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